税金のABC 相続税の物納
相続税は金銭で一括納付するのが原則ですが、それが困難な場合は物で納付する「物納」も認められています。その物納制度が今年度から改正されています。
税理士 菊地克子
今年度から制度改正
改正のポイントは上場株式の扱い。従来の制度では物納できるのは国債や不動産が上位に置かれ、これらがあれば上場株式は物納できませんでしたが、今年度からは上場株式も国債や不動産と同じ扱いになりました。
つまり国債や不動産があったとしても上場株式を物納することが可能になったわけです。
今回の改正は、株式の保有を促す狙いがあったのでしょう。
株式が利用しやすく
上場株式を物納する場合の注意点は、相続日の時価で評価する点。つまり相続日に100円だった株式が納税時に90円に値下がりしていても、物納すれば100円の評価で納税が可能です。
また株式に含み益があった場合、株式の売却代金で納税すれば「譲渡所得税」を支払った後の手取り額での納税になりますが、物納なら譲渡所得税はかかりません。
認められるには条件がもっとも、物納が認められるにはいくつかの条件があることをお忘れなく。金銭では相続税を納められない、分割払いでも不可能という場合しか
認められません。
また物納が利用できる税額の算定には、相続財産の内容や相続人の資力、収入(臨時収入も含む)も考慮されるため、軽々しく利用できない制度になっています。
十分に検討を
物納は、相続税の納期限までに申請書と必要書類を税務署に提出しなければなりません。
また、どんなに物納を希望しても、税務署から許可が下りなければ利用できず、さらに、却下されてしまえば納期限の翌日から却下の日までの期
間について利子税がかかりますので、十分な検討が必要になります。