税金のABC 遺⾔書(上)
仲が良かったはずの兄弟・姉妹が⾻⾁の争いを演じたり、権利を主張する⼈が何⼗⼈も名乗りをあげたりと、とかくトラブルが⽣じがちな「相続」。円滑な相続を実現させるために⼒強い存在が「遺⾔書」です。
税理士 菊地克子
相続⼿続きがスムーズに
相続時に遺⾔書があるかないかでは⼿続きの煩雑さが違います。遺⾔書があれば遺⾔者の死亡と同時に遺産分割が確定、相続⼈の間で協議をせずとも不動産や⾦融機関の名義変更が可能です。
遺⾔書がないと、まず亡くなった⽅の財産を調べ、相続⼈の間でどのように分けるかを話し合い、遺産分割協議書を作成する必要があります。
協議も必要なし
⼀緒に住んでいなければ、亡くなった⽅の財産を把握するだけでも⼀苦労。遺⾔書があれば相続⼈が複数⼈いて各県にまたがっていたとしても協議は不⽤で、⾯倒なやり取りは必要ありません。
トラブルを未然に回避
遺⾔書は遺⾔者の意思で相続財産の配分を決めることができるため、遺産分割により発⽣しがちなトラブルを防ぐことが可能です。
法定相続分にこだわらず、1番世話をしてくれた⼦どもに は少し多めに配分したり、経営者であれば後継者である⻑男に事業基盤となる財産を残すこともできます。また相続⼈以外の⼈への財産分与も可能です。
また遺⾔書の最 後に「付⾔事項」と呼ばれる⼀⽂を添えれば、法律に縛られることなく遺⾔者から残された⼈へのメッセージを伝えることができます。
相続⼈への思いやり
相続の仕事に携わっていますと、遺⾔書の⼤切さ、重要性を痛いほど認識します。亡くなる前にご⾃⾝が築き上げてきた財産の分配を責任を持って決めておくことが、残された相続⼈に対する思いやりなのではと感じています。
ただ、遺⾔書の作成にはいくつか の注意点もあります。次回はそのあたりについてお話します。